A place I drift, and to arrive at…
その日、愛車「仏倒れ」で町を走っていた小饂飩は、
ある、見知った人影を見て嬉々として声をかけた。
「おい、猿野じゃねえか?!」
その声に、相手は驚いて、だけど嬉しそうに。
振り向いた。
「あ、エロ師匠じゃないすか!」
しかし、その輝く負うな笑顔の周りにいたのは…。
「やあ、黒撰高校の小饂飩くんじゃないか。久しぶりだね。」
にっこりと麗しくもどす黒い笑顔を見せる元十二支高校野球部主将の、牛尾御門と。
「Hey,センパイ。」
同じく敵意たっぷりの笑顔の現主将・虎鉄大河がいた。
二人の敵意に満ちた視線に、小饂飩は一瞬たじろぐが。
めげずににっこりと笑い返した。
こんなことで千載一遇のチャンスを逃すわけにはいかないのだから。
「めずらしいとこで会っちまったな。何してんだ?」
その問いに、間髪いれずに答えたのはまたも牛尾だった。
「君が気にするようなたいしたことじゃないよ。
単なるミーティングだからね。
終わったから食事に僕らで行こうかと思ってたんだ。」
「ああ、三人でNa。」
虎鉄も牛尾が天国と二人きりにならないよう牽制しつつ。
牛尾と共に、「とっとと立ち去れ」とかなり分かりやすく言外で伝えた。
ちなみにこの日、いつも一年代表で来る辰羅川は用事(詳細は不明)で欠席したため、
天国は代理で来ていたのだった。
さて、二人分な冷ややかな視線に晒された小饂飩は、というと。
まだめげずに話を続けていた。
「そーか。実はオレ達も今からカイちゃん達とメシの約束してんだ。」
これは、意図的にたらした釣り糸だった。
果たして成果は、というと。
「あ、じゃあ一緒に行かねっすか?」
大物が釣れた。
「さ、猿野くん…。;」
「ね、キャプテン!久しぶりにチョンマゲとかおにーさんにも会いてーし。」
きらきら、とそれはかわいらしい期待に満ちた瞳を向けられ。
牛尾は無下に断れるはずもなく。
かといって快く了承するわけにもいかず。
立ち往生する羽目になった。
「いや猿野、あのNa…;」
どうにか自分も阻止しようとした虎鉄だったが。
「もうミーティングも終わったでしょ?じゃあ他校とか関係ねーし!」
「そ…そうだね…。」
牛尾も虎鉄も敵の思惑にのらされた事を痛いほどに感じながらも。
拒むことはすでに出来なかった。
などと思っていると。
キッ
「…?!」
見知らぬ車が、一同の傍に止まった。
車種はレクサス。
バン
車から出てきたのは…なんと。
村中魁、由太郎兄弟だった。
「カイちゃん!すげえピーなタイミングだな!」
「あれ?魁さん免許持ってたんですか?」
颯爽と現れた魁に、天国はすぐ声をかけた。
実は、待ち合わせするはずの小饂飩の傍に天国がいたのを見て無意識のうちに車を止めたのだ。
しかしさすがというか、そんな事は完璧にクールフェイスに隠して。
魁は天国に答えた。
「久しぶりだな猿野殿。それに牛尾殿に虎鉄殿。」
「やあ村中くん。健勝のようでなによりだね。」
礼儀正しく挨拶をする見目麗しい主将二人。
その後ろに火花やら竜虎やらいろいろと走っていたのは、天国以外の全員が分かっていた。
で、当の天国はというと。
「っか〜!いい車乗ってますねえ。」
車の方に夢中になっていた。
「だろ〜?!オヤジの車なんだぜ?運転は兄ちゃんの方がうまいけどな。」
自分の家の車が褒められたことに喜んで、由太郎も天国に言った。
そして天国は由太郎の言葉に、素直な感嘆を表した。
「へーっかっこいいな〜魁さん。」
輝く瞳に、魁は平静をくずしかける。
「い、いや…。」
「ところでカイちゃんよ〜。これから猿野(たち)も一緒にメシにしねえかって話になってんだけど。
ひっそりと現れる甘い空気に水を差したのは、小饂飩。
「…そうか…。」
「え?マジ、さるのも一緒に行くのか?!」
邪魔をされたのは気に食わないが、話の内容は捨て置けない。
「では、猿野…と牛尾殿、虎鉄殿。
我が家の車に乗るとよい。」
「ホントっすか?!」
「それはありがとう。」
「恩にきりますYo。」
三者三様、にっこりと笑った。
そして…それなりに豪華な和食屋で、非常に楽しい夕食会が始まったのであった。 天国だけが…。
その日、よいが回った天国を持ち帰ったのは…。
保護者同伴の生真面目なご兄弟だったとか。
さて、明日の彼はどこを惑わすのか。
明日も彼はどこかを流れる。
流れ着く場所を見つけるまで。
end
書き手の迷いがそこここに見られるかと…すみませんです。
kira様、お待たせしたあげくこんなのですみません!!
でも…すごく書いてて楽しかったです…!!
これからもミスフル頑張りますっ!
kira様素敵なリクエストありがとうございました!
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